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厭世書生の読書日記

主にSF、海外文学

むずかしい年ごろ/アンナ・スタロビネツ

 

むずかしい年ごろ

むずかしい年ごろ

 

 

 ロシア人ホラー作家アンナ・スタロビネツの邦訳初作品の短編『むずかしい年ごろ』。日常の隙間に入り込む得も言われぬ恐怖と幻想を驚くべき筆致と実験的な手法で描き上げた背筋も凍るようなホラー、終末世界、不条理文学。どれも個性的で奇妙な作品が詰め込まれた“幻想アソート”とでも言うべき魅力的な作品群。いまアツい作家の意欲作。ぜひぜひどうぞ。

以下は収録された作品のあらすじとかです。気に入ったらぜひ手に取ってみてください。

表題作『むずかしい年ごろ』
 6歳の双子の兄はある日中耳炎を患ってからというもの暴力的になったり、引きこもってしまったりと性格に変調をきたすようになる。果てには寝具に蟲や腐った食べ物を貯食したりと奇行をし始める。体を蟻に侵され乗っ取られようとしているのだ。蟻の生存戦略の魔の手はやがて双子の妹や母にも襲い掛かり…。蟻に乗っ取られるという悪夢的な恐怖とある種のシュールさを日記や叙事形体を使い分け描く奇抜な実験的文体の傑作。

『生者たち』
 革命と呼ばれる戦争が勃発し生き残った生者は人造人間を購入する。主人公も革命で失った恋人を完璧に模造した人造人間を工場に発注するが、欺瞞に満ちた模造品の恋人との生活の果てに主人公は…。いわゆるディストピア物。

『家族』
 主人公は列車の中で目覚めるが降りた駅は自分の見知った駅ではなく別物、世界も別物。自分を証明するものは何もなく、見知らぬ人物達が彼の“家族”となっている。別物の世界でも順応し、職を営み、知らない妻を愛すが…。別世界に行ってしまうディック的小説。

『エージェント』
 なんの特徴もない地味で平凡な脚本家の男は謎の会社に就職する。クライアントのオーダーを受け脚本を執筆する。オーダーと言ってもそれは、人生、殺害等さまざまで筋書通り脚本を書くのだ。男は順当に職務を全うするが、ある日顔面の半分を負傷した醜悪なクライアントから憎悪に満ち溢れた脚本を依頼される。男とクライアントの奇妙な邂逅。

『隙間』
 男は自分の娘から奇妙な警告を受ける。偶数回ドアを開けてしまうとそれはもう大変なことが起こるらしい、男は子供の言うことと思って真に受けないが…。

『ルール』
 少年はあるルールに縛られている。道路の亀裂を踏まない、床の十字を必ず踏む、夜のうちに動いたと感じた物を元の位置に戻すなど。子供にありがちな遊びのルールだが、守らねば少年は何やら恐ろしいことが起こるのではと気が気ではない。幼稚な妄想に支配されているだけだろうか?

『ヤーシャの永遠』
 主人公のヤーシャは文字通り心臓が止まり、死ぬ。しかし、何故か動き続けることが出来てしまう。医者はご愁傷様と伝え、妻は故人からアパートメントを相続しようと躍起になる。死んでいるのに動き続けるというシュールで不条理な作品。

『私は待っている』
 一人暮らしの『私』は母に作ってもらった料理を腐らせてしまったが、何を思ったかそのまま放っておく。すると鍋から美しい恋人が生れるのだ。ごみを愛する性的倒錯者の異常性癖。