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厭世書生の読書日記

主にSF、海外文学

華氏451度/レイ・ブラッドベリ

 

華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)

華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)

 

  昇火士という職業をご存じだろうか?いやですねぇ、消化士や消防士ではないんですよ。彼らが使うのは“昇火器”で彼らは“昇火士”。華氏451度は紙が引火する温度。仕事は本を燃やすこと。主人公ガイ・モンターグもその一人である。物語において“考える”ことのできる数少ない人物。

 人々は偽りのメディアに骨抜きにされ、隠された事実を知ることはできない。考えることを放棄したからだ。でたらめな報道、質の低い情報の娯楽。対し、体制に反発する情報への制裁は惨いものである。政府の煽動による過度な情報統制。昇火士もその事業の一環を担う機関であり、いわゆる焚書を行う。社会に仇なす悪書、有害図書はすべて燃やす!意義を唱える知識人、本を持つ連中は異端だ!どのような手段を用いても燃やす、それらを燃やす!分からないこと、小難しいこと、反発するもの、全て燃やせ!
 
 思考の放棄としてメタというにはあまりにも大袈裟だ。だが事実として現代において体制の元、情報の統制や隠蔽は珍しいことではない。私達は社会にいいように操作されていないか?疑う目を摘まれてはいないだろうか?この本は300ページに満たない。本文以外を差し引くとさらに短いのだが、大きな力を持った小説だ。ブラッドベリの痛烈な皮肉と警鐘。“考える”ことそれを忘れることはあってはならない。ハイネの言葉に

本を焼くものはやがて人間を焼くようになる。

という言葉がある。ベルリンの『焚書の広場』に書かれているものだ。まさにこの本はこの言葉の体現である。